目が覚めたら泣いていた。
ってセ○チューかよ!
冗談です。
目が覚めても修二が居なくなり、影師が解散する事に実感が沸く事は無かった。
とりあえず着替えて美咲の居る病院へ向かった。
美咲に心配はかけたくないし、嘘でも元気を装っていようと思う。
「ミズキ!」
美咲は嬉しそうに駆け足で俺に飛びついた。
「おめでと」
俺は奮発してマルイで買ったピアスを彼女の手に握らせた。
「ミズキ・・・ありがとう!」
結局、美咲の見舞いに来たのは俺と眞島のたった二人だけだった。
親も友達も彼女を知らない振り。
・・・女友達は来てくれないって解ってたから俺に電話したのかな・・・
謹慎も解けてない上、警察と話をつけなきゃなんないから、美咲が暇なのも今日くらいなのだ。
「あーあ。しんどい」
スタバでコーヒーを飲みながら美咲がこぼした。
「何が?」
「全部」
「・・・」
正直ヘコんだ。
修二のアメリカ行きでただでさえショックなのに追い討ちをかけるような美咲の言葉。
俺じゃ駄目なの?
頭をたらしコーヒーをひたすら混ぜた。
生クリームが溶けてなくなった。
「あ、カップル発見」
「春・・・」
偶然店に入ってきた春が俺たちを指差して笑う。
その隣には俺の知らない背の高くて美人な女。
「彼女?」
「ううん。お友達。」
イヤミな響きだ。
そんな可愛い子が友達に居るんなら紹介してくれりゃぁいいのに。
「どーした?ミズキ。テンション低いな。」
春はどうして鋭いんだろう・・・俺にはわからない。
「あ、ミズキ、山下さん」
店から出ようとした俺たちを春は引き留めた。
「Wデートしない?」
無邪気で、裏なんてなさそうで、屈託の無さそうな悪魔の笑顔。
コイツがしたいことぐらい俺にだって想像がつく。
「いや、今日は・・・」
「いいよ」
断ろうとしたが美咲がOKしちまった。
バカ・・・コイツは・・・
最後のダメ押しに更に気が重くなった。
早く帰りてぇ・・・
「そんでさぁ。ミズキの奴な」
その場から消えてしまいたかった。
俺はもう美咲に顔を見せる事すらできない。
今日に限って美咲の機嫌は悪いし、春に会っちまうし、美咲の前で散々俺の失態を言いふらされるし・・・
「っ・・・いい加減にしろ」
口の中でつぶやくように言う。
「いいじゃん。ホントにあったことだし」
「よかねーよ。」
修二みたく派手に衝突はしてなかったけど春が俺を快くみていないのは知っていた。
・・・だからと言ってこの仕打ちは酷すぎやしないか?
こんなヘコみにヘコんでるときに・・・。
「・・・」
美咲は黙って春の顔を見た。
笑顔の中に憎しみを込めた『女』の顔。
ひょっとしたら美咲は春が俺の悪口言ってるから怒ってるのかな?
俺の事を愛してくれてるから・・・なんちって。
そんな時
「♪♪♪」
ケータイが鳴った。
HYの『AM 11:00』。『影時くん』専用の着信だ。
こんな時になんだよ。
ポケットの中を探ってみる。
しかしすぐにメロディーは鳴り止んだ。
修二達が何とかしてくれたのかな?
5時になったやっと家に帰る事ができた。
これほど家にいたいと思ったのは本当に久しぶりだ。
俺は飯も食わずに布団に入るとすぐに眠りについた。
翌日
「どうしたんだよ!」
教室に入るなり俺は叫んだ。
「うるさいなぁ。別にさわぐほどのことでもねーだろ」
原因は春だ。奴の腕には真っ白な三角巾。
「帰りにフツーに歩いてたら・・・突然変な音がして・・・なんか痛くて医者に見せたら・・・折れてた。」
「マジで?!ありえねーじゃんホント。おばけ?」
そのパターン。おそらく『影』だ。
昨日『影時くん』に引っ掛った奴が春を襲ったに違いない。
修二や亜紀、ついには春までがが『影』にやられた。
この三つの事件。なんか関係あるのか?
今日のマックでの定例会議は始まって以来の会議らしい会議だった。
議題はここ一連の事件について。
やっぱり全員が関係があると考えているみたいだった。
「多分雑魚の『影』を操ってる親玉がいるんだ」
修二は言う。今日は珍しく何も頼んでいない。
「次は絶対ミズキじゃね?」
亜紀が言う。
「それはどうかな・・・」
修二は下を向いたまま続ける。
「三つの事件には皆共通点がある。わかるか?」
「さぁ」
俺はコーヒーを混ぜる。
マックのコーヒーはスタバのより安いけれど俺好みだ。
「ミズキだよ。皆、奴らに襲われた日には何らかの形でミズキと深く関わってる。」
「まさか・・・俺が犯人だってこと?」
まさかそりゃあねぇべ。
「いい加減にしろよ」
修二は顔を歪ませる。
今日の修二には笑顔が見えず、別人のようにピリピリしていた。
「じゃあ『影』が一族の恨み?みたいなのでミズキを苦しめるつもりで・・・」
「それも無い。あくまで俺が受けたのは精神的な嫌がらせだ。そんな事『影』自身が考えるわけが無い。人に憑いた奴が・・・」
ようやく修二の言いたい事が理解できた。
「美咲が・・・って言いたいのか?」
「ああ」
やつはすぐに返した。
「それしか考えられない」
「何で」
「嫉妬だ。ミズキにまとわりつく俺や亜紀が恨めしかったんだろう。だから無意識のうちに山下の『影』が・・・」
「ふざけんな!いくら美咲の近くによってもレーダーは鳴らなかった!」
「それは山下の『影』が未完成だったからだ」
「何で!証拠は?根拠は?」
「似たような話を知ってるから」
「・・・渡部っち・・・」
修二は下を向いて唇を震わせていた。
泣いてる?
「・・・『影』の元になるのは人の感情。そして人を媒体にして奴らは産まれる。“あの時”もそうだった。
奴らは精神的な打撃を受けて弱った人間を選ぶんだ。」
俺たちの間だけにしばらくの沈黙が流れた。
「・・・修二。顔あげろ」
修二はゆっくりと顔をあげる。意外にもさっきと変わらぬ真っ直ぐな目をしていた。
「間違いだったらアメリカ行く前にぶっ殺すかんな。」
「ミズキ・・・」
「よっしゃあ!そうときたらラスト大バトル、がんばろっ!!」
亜紀が立ち上がる。
「ね、渡部っち」
「修二」
俺も立ち上がる。
「・・・ああ」
俺たちは右手を合わせた。
「「「っしゃーーー!!!」」」
俺たちはM駅へと向かった。
最終戦・スタートだ。
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