眞島の車は二度目でもやっぱり速い・・・
「・・・先生・・・あたし・・・スピードに酔いそうッス」
「そうかー。良かったな。秋山。それも人生において大切な経験だぞ。」
「あんま良くないス。それとあたし、山崎っス。」
「悪い冗談はやめろよ」
眞島はさっきから何度もチラチラ亜紀を見ている。
どうやらコイツに言いたいことがあるようだ。
「なあ、秋山・・・」
ついに意を決したのか。眞島は赤信号でブレーキを踏みながら亜紀を見た。
「なんすか?」
「・・・カレシとは上手く行ってるのか?」
「は?」
ぷっ
「アハハハハハ」
俺は何かが弾けたかのように笑った。
そうか。去年のクリスマスの頃の『あの事件(#4)』・・・眞島の奴、信じてたんだ・・・。
「何がおかしいんだ!田村」
亜紀は訳がわからないという顔をして首を傾げていた。
眞島の愛車は今日も快調らしく、二時間半で成田に到着した。
「アメリカ行きは?」
「八時だ!」
あと二時間。
「先生、山下をよろしくお願いします。」
俺たちは空港の中に飛び込んだ。
「どこに居ると思う?」
俺は走りながら亜紀に聞く。
「免税店!」
「却下」
修二がそんなところに居るわけが無い。
「トイレ!」
「却下」
何個あるんだよ!
「じゃあさ、アメリカ行きの便のゲートは?」
「あぁ・・・有りえるかもな。でもどこに有んの?」
「知らない」
俺たちは立ち止まった。
「ちょっと・・・あなたたち・・・」
「あ、ごめんなさい!」
いきなり誰かに声をかけられお辞儀つきで謝ってしまった小心者な俺。
飛びとめたのは体格のしっかりした4,50くらいの女だった。
体格の割には高くて柔らかい声だ。
それにどっかで聞いたことがある。
「・・・貴方たち、修二君・・・渡部修二のお友達よね?」
「はい。おばさんこそ修二の知り合い?」
彼女は自信無さげに頷く。
「母です。」
え?
えええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーー!!!
マジかよ。全っ然似てねぇ!!
「二人に頼みがあるの。修二君に・・・」
「修二・・・」
「渡部っち・・・」
制服を着たままの見慣れた背中を叩く。
「ミズキに山崎・・・」
修二は驚いたような顔をして俺たちを見比べた。
「何も言わねーで行くんじゃねーよ。こんのバカめが。」
「ごめん。」
「行くな」
「え?」
修二は俺の目を自信なさげに見る。
「アメリカに。」
「・・・ミズキ・・・」
「ってお前のおふくろさんが。」
「ええええええええ〜〜〜?!」
「冗談だったんだとよ。何言ったかは知らねーけど」
「マジかよぉ〜・・・」
修二は頭を抱えた。
「大マジだ。だから・・・」
俺は修二に手を差し伸べる。
「残念だけど影師はまだまだ続けっかんな」
「うん」
修二は俺の手を取った。
「それにしても全然似てないな。お前のおふくろさんって。」
空港から見える満面の星空を見ながら、俺は修二に聞いた。
「ああ。あの人は継母だから。俺の母さんは父さんとずっと昔に縁を切ってる。」
「へぇ。」
「昔から折り合いが悪くて。あの人にはどうしても逆らえなかったんだ。だから今回も・・・」
修二は空を仰ぐ。
修二の『家庭の事情』ってのはきっとこのことなんだろう。
俺は初めて修二の事を知ることができた。
「スー」
亜紀はフェンスにもたれて眠っていた。
「疲れたんだな。」
「今日は色々あり過ぎましたからねぇ。誰かさんのせいで。」
「そんな言い方ないだろう。」
修二は頬をふくらませる。
「ズっ・・・あ、おはよ・・・」
いびきと共に亜紀は目を覚ました。
「何だよそれ〜!そんなんじゃいつまでたってもカレシなんかできねーぞぉ?」
「何それ!人の寝起きからイヤミなんて!!いいもん!あたしには塚本高史似の未来のダーリンが待ってるんだから!!」
「それはどうかなぁー」
俺たちは笑い転げた。
帰りの途中、やっとI県に入った頃だった。
「ミズキ!」
美咲が目を覚ます。
「おはよう。」
「ミズキ・・・あたし・・・」
俺は何も言わずに美咲を抱きしめた。
「わっおアツイねぇ」
「見てらんなーい」
亜紀と修二は苦笑いする。
「青春してるなぁ〜」
眞島も俺たちに親指を立ててサインした。
「青春してる!」
俺もサインし返す。
今日の俺は最高に機嫌がいい。
「よーし!!今からカラオケパーティーだぁ!!」
俺たちは家路までの道のりを最高に楽しんだ。
あ、でも俺と美咲がデュエットした時、修二と亜紀は耳を押さえて泣いてたや。
きっと俺たちの歌が最高に上手かったからだろうさ。
「眞島、ありがとな。」
「おい、ちゃんと先生と呼びなさい。」
「まぁまぁ。そんじゃ、明日な。」
俺と美咲は同じところで降ろしてもらった。
I県の大自然に満面の星空が広がる。
俺はやっぱり東京のそれよりこっちの方が好きだ。
俺と美咲は手をしっかりと繋いで歩いた。
「ミズキ・・・私、怖い夢を見てた。」
「ああ。」
「ミズキの大切な人をねたんで・・・そしたら夢の中でその人が不幸になっちゃうの。」
「それで?」
「夢から覚めたら・・・それが本当になってて・・・」
「そうか・・・」
俺は美咲を抱き寄せる。
「それはただの悪い夢だ」
彼女の耳元でそう囁いた。
そして、
バンっ
白い弾を入れた銃を美咲の腹に突きつけ一発撃つ。
美咲は俺の腕に倒れこんだ。
彼女にはもう運命の渦から解脱して欲しかった。
彼女は俺みたいな物好きじゃないんだ。
俺は・・・彼女に何にも縛られない生き方をして欲しい。
「美咲・・・・好きだ。」
俺は美咲の額にキスをして、俺の家に連れて行った。
足音だけが響いてく
足音が消える頃には
俺の運命の渦は光の集まりに変わって
また変わらない日々を彩っていくんだ
そう、俺の騒がしい日々を
―――――It Is My Party Life
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