#2 アキ
秋。文化祭の季節になった。
影師になってから約一ヶ月半。
あの日かた10匹ほどの影を倒し、5人くらいの女と付き合い、フられた。
残念ながら一度もセックスまでたどり着く事ができなかった。
ちなみに今はフリーだ。
今回は文化祭で起きた事件とある変わり者の女の話。
変わり者ってのはいつでも、どこでもひとりくらいは存在しているものだ。
山崎亜紀もその<いつでもどこでも>の一人に過ぎなかったのかもしれない。
しかし奴の奇奇怪怪っぷりは俺の神経を常に逆立てしていた。
その日も奴は絶好調に持ち前の奇怪っぷりを発揮していた。
それがいけなかったのかもしれない。
「どーするよ春。明日文化祭だぜ?」
マブダチ・山崎春とテントの下で日向ぼっこしながらムダ話。実に優雅なスクールライフ。
修二は一年二組・俺たちのクラスの番長的存在の田渕貴史他と二名と買出しに行っている。
明日は我らが高校、S高の文化祭。
嬉しい事に今日の授業は明日の準備のために全く無いのだ!
頑張ってる奴もいるようだけど俺はゆっくりとくつろいでいた。
「田村君、山崎君!」
そんな時に奴はやってきた。
「…んだよ。山崎。今は忙しいんですけど?」
走って来たのか、呼ばれざる客・山崎亜紀は息を荒げている。
「ガムテープ、無いっすか?」
コイツ、よく見ると制服のリボンも曲がっている。
女のクセに身だしなみもなってないなんて。それに色気も無いし。
「ほらよ。」
亜紀に向かって軽くガムテープを放り投げる。
「ぎゃひぃっ!!」
ガム手は狙っても無いのに見事、亜紀の頭に命中。
奇声が上がった。
「デヘ。ありがとうッス。」
苦笑いして亜紀はそそくさと去っていった。
「アイツ超ウケるし。」
春はケタケタと笑っていた。
あんまウケるとは思わないんだけどな。アレは。
・・・むしろムカツク。
なんつーか。女をバカにしてるみたいで。
「おいミズキ!何サボってるんだよ!!!」
修二に2リットルペットボトルで殴られる。
ゴンっという鈍い音。
「やめろ!死ぬだろが!!!」
「バリバリ生きてんじゃん。」
「うっそぉ!!奇跡?ハレルヤ〜〜〜ってバカ野郎!!」
春がまたケタケタと笑う。
「お前ら漫才みたい。超ウケる」
漫才じゃねーよ!!
そう言おうと口を開いた。が、
「漫才じゃねーよ。」
先に修二に言われた。
流石、相棒。手を合わせて見つめるだけで分かり合えるのだ。手はあわせてなかったけど。
「お前らもライブに出ればいいのに。その漫才で。」
ライブってゆーのは文化祭のイベントのひとつ。
ただし、バンドしか登録していない。
「嫌だ!!バンドの中にひとつお笑いが混じってたらまず間違いなく浮くだろ!!
俺らは白い布についた一滴のインクの染みか?あん?」
必死で反論する俺。
あ、ちょっとウマイ事言っちゃった。
「あ〜ダメだな。ミズキはちょっとサムいや。」
しかし春は笑いもせずに軽くあきらめてしまった。
何故かそれはそれでムカツク・・・
「んだよ!!!サムいって!!サムくて何が悪い〜〜〜〜〜〜!」
「ミズキちゃん。ハウス、ハウス!」
暴れる俺を修二が後ろからガシリと取り押さえる。
サムくて何がわるいんだ〜〜〜!!
「ハア。何かやる事ないの?」
「あるよ。山ほど。ミズキがやらないだけで。」
修二は電卓とにらみ合いながらせっせと帳簿をつけている。
「バカ。俺は調理班だから準備する必要がないんだよ。」
クラスの出し物は焼きそば屋をやる事になった。
俺はその調理係に大抜擢された。理由はもちろん、イケメンだから!!!
・・・ではなくただ単に焼きそばを焼きそうな顔をしているから・・・らしい。
何だよそれ!!!黒いからか?肌が黒いからなのか!???
明日の午後と明後日の午前が俺の担当。
ちなみに修二は買出し組、春は明日のライブに参加する特殊組だ。
「それでさ〜あのアニメに・・・」
「まじでぇ?超かわいい〜」
「よかったね」
また来た。山崎亜紀。
今度は奴のダチの千葉と小池も一緒だ。
奴らはオタクだ。アニメ大好き。
特に小池は熱狂的な声優好きだと俺の唯一のオタ友・伊藤良祐から聞いた。
良祐の話によると千葉は小池に無理やり話を合わせているらしい。
亜紀は無類のドラマ好きだがアニメにも詳しく、小池に話を合わせているという感覚はどこにも無いそうだ。
俺はあの三人の中でもダントツで亜紀が苦手だ。
まず、千葉は問題外。むしろあの二人とつるんでいる事に同情すらする。
何しろ顔がマジで可愛いから。外国の人形みたいに目が丸い。
しかも上品で真面目で、女らしくて・・・
まあ俺の好みはお姉さま系だから手は出さないけど。
次に小池。奴はもう既に女子としては見ていない。
腕毛もそらない、鼻毛も出てる、スカートも折らない。
あの女の気取らないスタイルには怒る気すら起きない。
なぜなら奴は女性ではないから。俺にとっては。
そして亜紀だ。
奴は半端にスカートを折り、半端にYシャツのボタンを開け、半端にはやりものの話をする。
ついでにすごく半端に太っている。
その中途半端さが癪に障る。やるなら最後までやれよ!!
オタクなんだか違うんだか、その他もろもろハッキリしてくれ!!!!
あ〜思い出すだけでもイライラしてくる。
あのプラスイオン女め〜〜〜!!
亜紀って呼び捨てで呼んでるのも春と紛らわしくならないためだ。
ちなみに亜紀と春は苗字が同じだが他人だ。
アイツの親戚扱いされたら俺なら次の日は学校に行けないくらい凹む。
そこんとこ、分かってくれ!!!
「楽しみだね。文化祭。」
修二は帳簿を閉じてため息。その後にっこりといつものスマイルをかます。
「まーな。何も無いといいんだけどな。」
嫌な予感がする。
こーゆーデカイイベントには必ずと言って良いほどトラブルもあるはずだ。
頼むから、何もおきないで欲しい。
もしこんな場所で何か起きちまったら
きっと、
・・・俺みたいに渦に巻き込まれちまう奴が出てくるから。
そう、それは俺の心からの願い。
流れ星よ、お願いします。
今は昼だけど。
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