「それにしても小池のあの顔。おっかなかったな〜。」
「だよね。有り得ないよ。アレは。こんなん?」
修二は目を指でツリあげて小池のまね(?)をする。
「アハハ・・・マジでうけるし!!」
これが一学年のイケメン四天王のする顔かよ・・・超腹イテェ・・・
ドスッ
「キャーーーー!!!!」
何かが倒れる音と悲鳴。
思わず振り向く。
「「『影』?!」」
二人同時に声が出た。
『影』の傍にあるテントが、ポールを曲げられ、グシャリと潰れていた。
「・・・なんちゅー怪力だよ・・・」
「コイツ、昨日逃がした奴だよ」
畜生。こんなところじゃ下手に能力が使えねぇ!
俺の腕じゃ間違いなく生徒の方に当たっちまう・・・・。いや、マジで。
仕方ない。
「とりあえず追いつめっぞ」
修二は黙ってうなづき『影』のほうへ走る。
しかし
「あっ」
『影』の身体は半透明になり、次第にスッと消えていってしまった。
「・・・またかよ・・・」
思わず壁にもたれかかる。
「ミズキ。んなことしてる暇があんなら『影』を探そう。絶対まだ校内にいるから。」
「どうして?」
「言っただろ?『影』は負の感情に満ちた人を好んでるって。
こんなに人が居ればそんな奴ひとりは居るだろ。」
なるほど。
「手分けして探そ。見つけたら手を出さずまずはメールな。」
「了解」
二人同時に散った。
俺は走った。
何故か亜紀のことが気がかりでしょうがない。
とりあえず奴が戻ってるか確認するために二組の持ち場へと向かった。
「秋山ちゃん?来てないよ??」
コッペパンに切れ込みを入れながらバスケ部の山本が言う。
「そっか。ありがと。」
畜生・・・どこ行っちまたんだよ・・・亜紀の野郎!!
再び走る。
亜紀はおそらく人目が付かないところに居る。
あくまでミズキ様のカンだけど。
・・・という事は・・・
文化祭でどこもかしこもにぎわってる中でも静かなのは・・・校舎裏か?
つってもうちの学校は体育館と特別教室のある記念館を含めて5つ校舎が有る。
どれだよ・・・つーか亜紀が校舎裏にいるとは限らないし・・・
そもそも亜紀が『影』に襲われてる可能性だって微妙・・・
っったぁ〜〜〜!!
あ〜っ。もうっっ!!そんな事考えてたら事がすすまネェ!!
とりあえず俺のカンに賭けてみよう!
俺はナルシストだ!自分大好き!!だから自分の考えを優先する。そうだろ?田村 聖尋樹!!
それにカンじゃなくても、あんなに辛そうにしてたんだから亜紀が襲われる可能性は十分過ぎるくらいだ。
仕方ない。近場の校舎から回ってみよう。
まずは第三校舎。
1〜3組まではココ。5校舎の中では一番小ぶり。
校舎裏は自転車置き場。
溢れる程のチャリを掻き分けながら進む。
「あ〜もうっチャリ邪魔!!」
そう叫んだ瞬間。
ガタガタガタ
音を立ててチャリがドミノ倒しになった。思わず走るのを止める。
「・・・俺知らない!」
再び走り出す。
一人の命>倒れたチャリンコ だ!!
きっと誰かが直してくれるさ。アッハハハハ
仕切りの柵をよじ登り、飛び越えて、次は記念館。
「なんだよ。まさかお前も山崎探してんの?」
「それはこっちの台詞。」
柵を飛び越えると修二にバタリと会った。
んだよ。同じ事考えてたんだ・・・。
「第二校舎と第一校舎には居なかった。」
修二が言う。
「じゃあココか体育館?」
「多分。」
「キャーーーーー!!」
亜紀の声だ。
カン、大的中。流石俺。愛してるよ。
それにしても今日はよく悲鳴を聞くもんだ。
手遅れにならないうちにと更にスピードを上げる。
「山崎!!」
「田村君・・・渡部君・・・」
山崎は壁に背をペタリと付けてヘナヘナと座って泣いていた。
顔は涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしている。
うわっ!めっさブサイクだ・・・
「ねえ・・・あの化け物・・・何?」
亜紀は目の前に居る『影』をゆび指して言う。
「見えてんのか?」
奴は何度も頷く。
「アイツ、アイツが看板汚した!!・・・見たの。」
「山崎さん。説明は後でするから逃げろ!!」
修二は亜紀に手を差し伸べる。
「ゴメン。・・・腰ぬけた・・・」
「マジかよ・・・」
ミズキっ!修二は俺を一喝する。
「山崎。大人しく見てろよ。」
手のひらを宙にかざして銃を出す。
今度こそ逃がさない!!
かまえて引き金に指をかけて・・・
「うわっ!!」
『影』が飛びついてきた。
「あ・・・」
不覚にも思わず銃を落としてしまった。
野郎、俺にパンチする気だよ・・・
さっきポールを簡単に曲げちまった奴のパンチ。
考えるだけでも身の毛もよだつ。
今度は俺が命の危機だ。
また空くの?空いちゃうのかな?腹の穴(#1参照)
あ、思わず俳句調。
しかも何のヒネリも無いと来た。
あ、来る!
思わず目を閉じる。
しかし。
影の動きはフリーズしている。
何で?
ふと奴の足元を見る。
亜紀がクラス全員に支給された焼きそばのヘラの角で何度も何度も奴のスネを刺していた。
その隙に修二は俺の銃を拾い上げてパスをする。
俺は銃を再び構えた。
「ナイス山崎!」
しかし。山崎が一瞬顔を上げた隙に、『影』の足は奴の腹部を捕らえ、壁まで一気に吹っ飛ばした。
「ヒッ!」
「山崎ーーーー!!」
叫んだ。
返事が無い。
あれほど願ってたのに。あれほど、あれほど願ってたのに!
何でなんだよ!なんで俺の知り合いを傷つけるんだよ!!!
「コンチクショーーー!!」
一発放つ。
今度は奴の右足に命中した。
足じゃあ致命傷を負わす事が出来ない。そう思ってたんだけど・・・
『影』はうなり声をあげて消えていった。
そうか。弱点だったからヘラごときで怯んでたのか。
「山崎は?」
修二はニコリと笑う。
「大丈夫。こんくらいなら俺が治せる。」
「治す?」
「言ってなかったっけ。俺のもうひとつの能力。」
修二の能力のひとつは俺と同じ狙撃。ただし威力は俺の10分の1くらい。
もうひとつ能力があるなんて初耳だ。
修二は亜紀の負った傷に手をかざす。
するとそこから柔らかい光が発して亜紀を包み込み、奴の傷を癒していった。
「ん。。。渡部君?」
亜紀が目を覚ます。
「おはよう」
修二はニコニコと笑っている。
「山崎さん。お目覚めのところ悪いんだけど・・・」
そして亜紀の両手をグッと掴む。
まさか・・・
俺はため息。
「俺たちの仕事、君も手伝ってくれないかな?」
やっぱり言うと思った。
「へ?仕事??・・・仕事って・・・市内清掃とか?」
「違うよ。あの怪物と戦う仕事。影師ってゆーの。」
「あたしで良いなら・・・いいよ」
もしこれが漫画なら俺はガックリという効果音を身にまとっているだろう。
いくら能力者でも亜紀までを巻き込もうとするなんて・・・修二の貪欲さにはあきれる事もできない。
こうして山崎亜紀は渦にすんなりと巻き込まれたのだ。
あー。・・・もっと影師を辞めたくなってきたぜ。
ガックリ。
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