そこは楽園
そこは地獄
だけどそこから出てしまえば手に残るものは残酷なほどの無
僕はそこに居た僕をぼうっと辿る
何も無いことを知っていながら
答えを探して辿り続ける
僕を導いてくれるものはそこにあるはずなんだ・・・
だから・・・・
Prologue 永久
夜の桜が舞う
月が妙に明るい
強い眼差しのあばた顔の男
青白い肌に影ができるほどまつげの長い男
小さなこぶしに小柄の女
“3人”と対峙する大きな怪物。
ああ、またこの夢か。
一人が「いくぞ」と言って進みだす。
取り出したのはピストルだ。
彼は構えて引き金に指をかけて―――
「永久!」
バンッ
派手な音と痛みに僕は目を覚ました。
目の前にはメガネをかけた30代くらいの男が仁王立ちしている。
腰に当てられた手には僕を殴った出席簿。
確か大村とか言ったっけ・・・
「お前・・・俺の授業で寝るなんていい度胸じゃねぇか。」
クラス中がどっと笑う。
寝ることが簡単に止められるんなら今頃殴られたりなんてしていない。
どうしても止められないんだ。・・・眠い・・・
「永久!二度寝してんじゃねー!!!」
「いでっ」
また殴られた。
「早速目ぇつけられちゃったなー」
藤原晶が嬉しそうに笑い、二本の指でメガネを上げる。
「やめてくれよ・・・縁起でも無い。」
「いいじゃん!永久らしい。」
千秋爛も嬉しそうで、病的なほど白くて細い腕を僕の腕に絡めてきた。
「やだ!絶対やだ!!!」
僕は必死で否定し続ける。
しかし二人にはまるで聞こえていないようだ。
「もうやだ!!!」
二組から誰かの叫び。
この声・・・このかすれた声は・・・
“行くぞ・・・”
最近よく見る夢の男の声になんとなく似ている。
「永久?どうした」
「大村でも居たんじゃね?」
藤原が俺の顔を覗き込む。
「あ、あぁ。大丈夫。気にしないで。ね、行こう。」
藤原と千秋をグイグイと押して俺はそこから離れた。
日が沈んでから何時間かが過ぎた。
頭の中であの夢の事がどうも引っかかって離れようとしない。
「ハァ」
ベッドに寝転んで藤原から借りた漫画を開く。
頭に入らない。
「やめた」
散歩にでも行こう。
薄手のコートを羽織って僕は裏口から外へ出た。
あの夢は何なんだろうか。
かれこれ一ヶ月は見ている。
同じ夢を二回見ることだって稀なことなのに。
もしかして虫の知らせってやつなのかな?
・・・なんて考えすぎだよね・・・
フゥッ
生暖かい風。
もう春だ。桜も綺麗。
フゥッ
明日から二年生。
責めて藤原か千秋とは同じクラスになりたい。
フゥッ
大村には絶対に担任になってほしく無い。
フゥッ
やけに風が多く吹く。
春だからだろう。
グォォ
何かのうなり声。
「ぇ・・・」
振り向いた。
その瞬間、言葉を失った。
そして、暫く経ってから
「うわぁぁぁぁぁーーーー!!」
力の限り、精一杯叫んだ。
あんな禍々しい生き物がこの世に存在しているなんて。
僕の意識はプツンと途切れた。
僕はまた夢を見た。
強い眼を持ったあばた顔の男が僕の前に立って怪物に銃弾を放っていた。
目が覚めると、僕は壊れためがねを握って公園のベンチに座っていた。
「二組・・・げぇー・・・まぁた永久とクラスが一緒だぁ・・・」
藤原がため息をつく。
「俺三組〜。よっしゃ!永久のお守りしないで済むぜ!」
千秋は「なー」と言って僕の肩に腕を組む。
本当はさびしいのかな?
「永久が居るって事は二組の担任は大村か?」
藤原はいたずらっぽく笑った。
「何でそうなるんだよ!」
「俺は大村に100円賭けてもいい。」
藤原が言う。
「じゃあ俺は八島に150円」
千秋はそう言って僕を見る。
八島は去年の英語担当。
彼には一度、寝ていたら辞書の角で殴られた事がある。
ってゆうか!
「どうしてそんなに俺の嫌いな奴の名前ばっかり出すんだよ!」
「あーもうマジ眠いー」
「ミズキが徹夜でゲームしようなんて言ったのがいけないんだかんな。」
二人の新・二年生とすれ違う。
「?」
どこかで見たような気がした。
そう、僕の物語はここから始まったんだ・・・
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