<sideξ 田村聖尋樹>
「今頃、亜紀と永久、ラブラブになってんじゃねーのお?」
「二人っきりにしたくらいでそんなんなるわけないよ」
修二は苦笑いする。
俺達はトイレに行った後、永久と亜紀を残したまま駅前のドトールで一休みしていた。
「なあ修二。亜紀と永久って釣り合わないよな。」
「なんだそれ。自分でラブラブになったかなとか言っておいて。」
「だって・・・亜紀には運命の人がいるんだぜ?」
「え、誰?」
珍しく修二が食いついてきた。
「千秋ちゃん」
「ああ、あの白い子だね。でも何で?」
「何でって・・・えーっと・・・美咲に似てるから。」
修二は期待はずれと言った感じでテーブルに顔を埋める。
「何だよそれ。ただのミズキのオススメじゃんかよ。そういうのは運命って言わないの。」
「でも間違いなく永久より釣り合ってる!」
「それは山崎にしてみたら余計なお世話だよ。
それに山崎と千秋君が一緒に歩いたら黒と白でオセロみたくなっちゃうよ。」
「そりゃあそうだ」
俺と修二は他の客にお構いなく大笑いした。
追い出されたらどうしよう
<side刀@高橋永久>
「うわあっ」
ドンッ
『影』に弾き飛ばされ、すぐ後ろの壁に背をぶつけた。
何度こうやって打ち付けただろうか。
もう力が出せない。
意識が朦朧とする。
ああ・・・僕はここで死ぬのか。
ごめんね、山崎さん。
何も出来なかった。
せめてものお詫びに天国に行ったらいくらでも君の話を聞くよ・・・
目の前の死に向かって恐れも、満足感も、怒りも全く感じられない僕はやっぱりおろかだ。
ただちょっと、申し訳ないだけ。
それだけなのだから。
『影』の爪が僕の首に向けられる。
僕は自分の死を受け入れようと目を閉ざした。
しかし
「?」
優しい光が僕を包み込む。
あったかくて気持ちいい。
体中の痛みがすうっと消えていった。
「永久君・・・」
「・・・え・・・」
山崎さんだ。
山崎さんが八重歯をのぞかせてにっこりと笑って居る。
目は潤んでいた。
「どうしてここに?」
「せっかく復活したのに。酷いなあ。その反応は。それより!」
山崎さんは左手を高く挙げ、小さな手のひらを目いっぱいに開く。
するとそこに光が集まり、それが拡声器へと姿を変えた。
「だっせぇ。でもあたしにお似合いかな?」
山崎さんは小さな声でつぶやき、苦笑いする。
「永久君。耳塞いどいて。」
「?」
僕は彼女に言われたとおり指で耳を塞ぐ。
山崎さんは深呼吸して思い切り拡声器に向かって声をあげた
「~~~~~~~~~~~~~~~~」
「いっっっっ」
耳が千切れそうなほど痛い。
山崎さんの叫び声は拡声器を通して衝撃波と化し、『影』の体を貫き、そしてバラバラにした。
「山崎さん、どうして・・・?」
「急所は外れてたみたいなんスよ。そんで光に会って。・・・この力を貰ったんスよ」
「光?」
記憶がフラッシュバックする。
田渕に殴られて気絶したときに僕の夢の中に出てきたやつだ。
「山崎さん・・・」
何はともあれ、僕は彼女が生きてることに最高の喜びを感じた。
「生きててありがとう」
「こちらこそ。」
大粒の雨がぽつぽつ降り出す。
「げ・・・雨」
山崎さんは水から必死で化粧で覆われた顔を守ろうとする。
しかしそれは手遅れのようでみるみるうちに化粧ははがれていき・・・
「あ・・・」
現れたのはあの夢の女の顔だった。
「山崎・・・さん?」
「ちょっ!やだっ見ないでよ」
「山崎さん!」
僕は彼女の腕を掴む。
「ひょっとして・・・人の夢に入る力、持って無い?」
彼女は必死で首を横に振る。
「ええっ無いよ?ってつーか有ったら欲しいかも・・・」
「そう」
僕は手を落とす。
「永久?」
後ろから聞きなれた声が響く。
「え?」
僕はゆっくりと振り向く。
「藤原・・・」
透明のビニール傘をさした藤原だった。
「どーしたんだよ。びしょぬれじゃん。血だらけだしさあ。」
「え?」
「それにこんな刀、どこで買ったんだよ。」
「「?!」」
息が止まりそうになった。
いや、体中の全ての器官が、時間が、地球の回転が、山崎さんの貧乏ゆすりが、
ありとあらゆる全てがとまったように感じた。
前に渡部君が能力も『影』が見える人にしか見えないって言ってた。
ということは・・・
藤原がノウリョクシャ?
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