<side刀@高橋永久> 

僕には大切な“駒”がある。

“彼”は僕にとって最も大切な駒なんだ。

逆に言えば、傍目からは“親友”として見られているであろう彼ですら、

僕にとっては僕がこの腐った小社会を生きていくための駒でしかないのだ。

僕がどんな失態を犯しても全力を尽くして守り、

そしてそんな僕を信じて疑わない便利な手駒と。

僕はずっとそう思って生きてきた。

周りの人間全てを。

後悔なんてしていない。

それが僕のやり方なのだから。


#4 親友 


放課後、僕は藤原と二人きりの教室から出ようとしていた。

「永久・・・」

藤原が僕の腕を掴む。

「なに?」

「どこ・・・行くんだ?」

彼は見るからに不安そうな顔をする。

「ちょっと・・・」

今日は皆との会議の日だ。

休むわけにはいかない。

「行くなよ」

彼の手に力がこもる。

「行かないでくれ」

「っ」

腕にジンジンとした痛みを感じる。

真っ白なワイシャツの腕の部分が僕の血で真っ赤に染められていく。

「ふじわっ・・・」

「どうしても行くってなら・・・」

藤原はメガネをつりあげ、虚ろな目で笑い、

「お前を・・・殺す」


「ぎゃぁぁっ」

布団から飛び起きる。

チチチチチチ

小鳥のさえずり。

夢か。

とりあえず夢でよかった。

昨日のこともあってか、僕は酷く不安に駆られていた。


そう、昨日。あの雨のことだ。

藤原は普通の人には見えないはずの僕の刀を指差し、

「永久、こんな刀どこで買ったんだよ。」

と。いとも簡単に言ってしまった。

「え?えーっと・・・古着屋さん?あ、今日見たいテレビあるんだっけ?じゃーな!」

「おい!永久」

「山崎さん、行こう。」

「え?待ってよ〜永久君!」

そしてすぐに山崎さんの手を引き、藤原から逃げるかのように駅へと走った。

振り向きざまに見た藤原の顔はどこか寂しそうだった。

藤原の事だから誰にも口外はしないだろう。

それでも、嫌な予感がしてならなった。



<sideξ 田村聖尋樹>



「拡声器?やっべ〜超亜紀っぽいじゃん!」

「笑わないで。ホンットに恥ずかしいんだから。」

亜紀はため息して頬杖をつく。

「それにしても永久君を守ろうと思って能力に目覚めたなんて。亜紀も恋してるんだね。」

修二は相も変わらずニッコリと笑う。

「やだぁ、もう。修ちゃんったら恥ずかしっ。キャッ」

「うえっ」

亜紀の頬を赤らめてテーブルに「の」の字を書く姿に吐き気を覚える。

「亜紀ちゃん。恋するのはいいけどストーカーにならないように気をつけろよなー」

「なるか!なるもんか!!!」

「っつーかさ、永久と俺って結構似てんじゃん。やっぱお前、俺に惚れちゃってたんじゃないの〜?なぁ〜」

「修ちゃん、永久君今日遅いね〜。」

「今日は科学のゼミだって〜。あ、俺はサボりね〜。」

「シカト?!」


<side刀@高橋永久>

悪い予感ってのはいつもよく当たる。昔からそうだ。

案の定、今日一日藤原とは何の会話もしていない。

彼は、同じクラスの西野君(ヤンキー顔の2chネラー)や三組の加宮君(漫画の趣味が同じ千秋の友達)

とばかり話していて僕のところへは一度も足を運びやしなかった。

僕を恐れているのだろうか。

それとも僕が彼を避けてしまっていたのだろうか。

どちらにしろ、この調子じゃ当分の間藤原とは会話をすることができそうにない。

仕方ない。彼があのことを忘れるのを気長に待つしかない。

藤原は大切な手駒だったのに。

アイツの後ろでずっと大人しくしていたかった。

しばらくは千秋と翼のにお世話になろう。


化学のゼミが終わった。

千秋に参考書のカバーを逆につけられて少し焦った事を除いては別に何も無かった。

指名をされることも無いし楽なもんだ。

これが古典なら指名されたときは藤原に答えを教えてもらうんだけど。


ああ。千秋は僕の道を塞ぐことしか考えない。

だけど藤原は僕のために道をひらけてくれる。

彼は便利な奴だ。


「ふーじわらっ♪♪」

「おっ千秋」

千秋は二組にずかずかと入り込むなり藤原に飛びつく。

幼稚すぎるコミュニケーションに心底苛立ちを感じる。

仕方ない。これがコイツのやり方だ。

「藤原!今日一緒にゲーセン行こうぜ!!」

「あぁ。わかったわかった。校門で待ってろ。いいな。」

藤原はまるで子供をあやすかのように千秋をなだめる。

「わーった。とりあえずじゃーな!」

千秋は走って教室を出て行った。

「・・・」

藤原は千秋を微笑んで見送った後、僕のほうに目を向ける。

「永久・・・」

夕日に染まる教室にふたりきりになってしまった僕と藤原。

「ごめん。今から用事が・・・」

そうだ。今日は会議だ。

僕はグレゴリーのリュックを背負って教室から出て行こうとする。

「まて!行くな!」

藤原は僕の腕を掴む。

「!!」

今朝の夢の場面がフラッシュバックする。

血に染まるワイシャツと藤原の虚ろな笑みを・・・

「離せ・・・」

「え?」

「離せ!!」

僕は藤原の腕を力いっぱい振り解く。

「永久?」

とにかく、藤原から離れたい。

その想いひとつで僕は教室から飛び出した。

「おっ」

三組からひょっこりと出てきた千秋にぶつかりそうになる。

「どーしたんだよ永久!一緒にゲーセン行こうぜ〜?

って永久!?どこ行くんだよ永久ぁ〜?なあ永久ぁ〜」

僕は何も言わずにそのまま駆けていった。

後悔するって解ってたのに。

何故だかそうせずには居られなかった。


僕のこの行動が事件を起こしてしまうとも知らずに・・・


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