<side  ??? >

雲が赤く染まる。

日は俺をも赤に染める。

目に映るのは窓ガラスに映ったおれ。

汚い、汚いおれ

ガラスを指で辿る。

指がジャマして平面のおれが途中で途切れる。


そう。見えなくていい

こんな醜いもの

見たくも無い



ああ、美しいものになりたい。

おれも美しいものになりたい。

そう、彼の心のように

あの人の拳のように

ヤツの目のように



<side刀@高橋永久>



「藤原!!」

僕と渡部君はどうにか藤原のもとにたどり着いた。

「遅かったじゃねぇか…」

下から途切れ途切れの声がする。

「!!」

僕は息を飲んだ。

ミズキ君と山崎さんが傷だらけになって倒れていたのだ。

「ミズキ!亜紀!!」

渡部君はふたりのもとに駆け寄る。

「…藤原…か?」

「まぁ…ね。なかなか強いよ。こ…いつ」

かすれた声で応えた山崎さんの腕と腹からは止めどなく血が流れて行く。

「待ってろ!今助けてやる」

渡部君が両手をミズキ君の胸にあてがう。



「邪魔するな」

そう言って藤原が右手をぐっと握り絞める。

「うっ」

渡部君は喉元を押さえ、突然苦しみ出す。

「渡部君?」

「っあぁ…永久くっ…っあっ」

渡部君は膝を地につけ、そのまま倒れ込んだ。

「渡部君!?」

彼の首には何かに締め付けられたような赤い痕が残されていた。

僕は黙って立ち上がる。



「…藤原…」

今の彼は…僕の知ってる彼じゃないんだ…。

彼は…例え知らない人でも傷つけたり悲しませたりすることを嫌うっていうのに。

こんなことできる筈ない。



「わかったよ。…助けてやる。待ってて。」

僕は光から刀を造り、藤原に向けた。

「“ニセモノ”で何ができる」

藤原は口を歪めて笑った。



ニセモノ…?



背筋に寒気が走る。

その言葉が何度も頭の中で響く。



ニセモノって…何?

まさかこの刀?



「隙だらけだ」

藤原はいつの間にか目の前に立ち、僕の腹に両手を当てていた。

「?」

藤原は笑う。

「うわぁぁぁぁ」

僕は彼の掌から生まれた衝撃派により何十メートルも飛ばされ、背を壁にぶつけた。



「ふじわ…ら」

それでも何とか刀を伝って立つ事ができた。だから歩いた。刀を握り直す。

歩きが走りに変わった。刀を構える。

さらに速度を速めた。

藤原の左足に刃を向け、切り付ける。

…つもりだった。

刀は彼の足に届くことなく“何か”に遮られ、それが僕を再び壁まで吹っ飛ばした。

「…って」

所詮僕じゃこの程度の力しか出せないんだ。

無理だったんだ。

藤原を助けることなんて…。

「…トワ…」

藤原が僕の名前を呼ぶ。

いや。違う。

きっと彼は僕のことは呼んでいない。

なぜだろう。

一瞬でわかった。

「うっ」

ドクン

突然胸が痛み出す。

わかる。

僕の胸の奥を誰かが必死でたたいてる。

―ダセ ココカラ ダセ―

“彼”が…もうすぐ…来る。



<sideξ 田村聖尋樹>




体中が痛んで指一本動かせない。

修二もやられちまったから治療もできないし。

この絶体絶命の危機を永久ひとりにまかせるのは不安でならない。

確かに永久も強いけど残念なことに藤原はそれ以上に強い。

案の定、もう二回も吹っ飛ばされた。

コイツの体ももう長くは持たないだろう。

「んっ」

永久は立ち上がり、閉じた瞼をカッと開いた。

全身に鳥肌が立った。

彼の身に纏うオーラに冷気すら感じる。

空気がガラリと変わった。

まさか…“アイツ”がまた…

「久しぶり。藤原晶」

藤原は彼の豹変にも驚かず、むしろ待っていましたと言わんばかりにニヤリと笑う。

この永久は…俺たちの知っている永久じゃない。

あの日の…千秋と藤原、そして俺の見た“トワ”だ。

「待ってた。待ちわびたよ。お前を。あの日からずっと…ずっと」

「それはどうも。だけどとっとと片付けちまいたいんだ。そうじゃないと王子がうるさくて。」

「やれるもんならな」

「言ってろ」

トワは刀を持っていない左の掌を宙にかざす。掌には眩いほどの翠の閃光が集まり、それは洋剣を形造る。

そして刀に洋剣をクロスさせた。

何するつもりだ?こいつ…。

すると二つが光だし、ひとつの太刀を造りあげた。

「夢と信頼の力の融合“夢幻丸”。今からお前をこれで十秒で倒す。」

「ふっ減らず口だけは得意みたいだな」

藤原は両手を前に出す。

さっきの永久みたいに見えない壁を作るつもりだ。

「いち」

永久は藤原のもとに駆け寄る。

「に」

間合いを取る。

「さん」

腰をかがめ、構える。

「し」

藤原の肩目掛けて太刀を降り下ろす。

しかし、再び見えない壁に阻まれ刃が止まる。

「残念だったな。俺の勝ちみたいだ。」

藤原は声を出して笑う。

「甘い」

トワは太刀を持ち上げ、一気に振り下ろした。

「今ので丁度十秒だ。」

藤原の肩から血が吹き出す。

「どうして…おれの壁を…斬れたんだ…」

「ん?お前、壁なんて作ってなかったんじゃないのか?」

「…」

藤原は一筋の涙を流し、その場に倒れた。

「ト…ワ…」

「藤原。よかったな。望みが叶って」

トワは笑っていた。

はじめて見る彼の笑みは思ったよりも優しくて、きれいだった。

「これ、返すぞ」

太刀は光だし、元の刀と洋剣に分かれる。

トワはその洋剣を藤原の前の地面に突き刺した。

「それと」

トワ照れたように頭をかく。

「俺を救ってくれてありがとう」

そう言ってトワは魂が抜けたかのように地に倒れた。

「トワ…」

藤原は永久の髪を指先で触れ、その後、震える手で、しかししっかりと洋剣を握り締めた。

すると辺り一面に優しい光が溢れ出した。

その光を浴び、俺の体中の痛みはすうっと消え、

修二、永久、そしていつの間にやら気絶していた亜紀も目を覚まし、立ち上がっていた。

藤原に憑いていた影もゆっくりと彼の体から離れていく。

さて。ここは俺様の出番かな?

俺は銃を構えた。

「ミズキ待って」

「?!」

聞き覚えのある声に俺は手を止めた。目の前に美咲が立っているではないか。

「みさ…き?」

「ミズキ!」

修二が叫ぶ。

「騙されるな。こいつはあの時の…山下の影だ。」

「!」

ハッとした。今でも昨日のことのように覚えている。

一年の頃の二月。

俺はヤツを取り逃がした。

「へぇ。いいのが居るじゃん。」

美咲の皮をかぶった『影』は藤原の上にある『影』を見て唇をなめた。

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