<sideξ 田村聖尋樹>
日曜
「亜紀・・・。今日は化粧、かな〜り頑張ってきただろ?
何時間かけた?正直にいってみ。」
呆れ混じりに聞いてみる。
「四時間。今日やらなかったらいつやるの?一世一代の大勝負なんだから。」
亜紀は人工の睫毛でいっぱいの目をシバシバさせる。
「ああそうですか。」
不自然な白い肌に赤い唇。
変な日本人形だよ。これじゃあ。
「それにしても永久君遅いね。」
修二が時計と景色を見比べながら言う。
「ひょっとしてすっぽかしちゃったとか。」
亜紀派不安そうな顔をして俺の服を掴む。
「いやいや、考えすぎだろうよ。つーか離せよ。なぁ。
いでっいででででっ!!爪立てるな!」
「皆〜!!」
「あ、永久君vV」
亜紀はパッと俺から手を離す。
「ごめん〜寝坊した〜〜」
「やっぱり」
向こうからびっくりするほどベタに息を切らしながら手を振り走る永久。
漫画かよ。
<side刀@高橋永久>
「やっぱセカチューはええなぁ・・・」
ハンカチをぐしょぐしょにしてもまだ泣き足りないのか、
ミズキ君は渡部君のハンカチを奪って更に泣いていた。
「そう?なんかリアリティが欠けるってゆーか・・・
俺、あんま恋愛とかそーゆー映画・・・つーか邦画自体あんま好きじゃないからなぁ・・・。」
いつも思うことだけど渡部君はモテる割りに恋愛に関して妙にさめている。
『影』のことになるとあんなに熱心になるのに。
<sideξ 田村聖尋樹>
「あーもう!マジじれったいわい!!」
「何が?」
亜紀と永久を残して、俺は修二と公衆トイレに居た。
「亜紀だよ!決まってんだろ?あいつ、いつもはギャーギャーうるさいくせに
ここぞって時に黙り込みやがって!もっとアピールしろ!
ほら、胸とかで!顔ダメだから胸とかで!ゆーか胸しかねーよ!あんなダメ女。
むしろ胸キモイ!」
「ミズキ、落ち着いて。」
「これが落ち着いてられるかってんだ!」
畜生!なんかイライラする。最近の若い子はもうっ!
「まあまあミズキ。落ち着いてよ。俺に考えがあるからさあ。」
「何?やっぱ胸?お前も。」
「そんなんじゃなくって・・・。」
修二は俺にコショコショと耳打ちする。
「ナイスアイディア☆」
<side刀@高橋永久>
「遅い・・・・・・・」
山崎さんは腕を組み、紫のパンプスを履いた足でトントンと地面を叩く。
「ホント、遅いよね。」
「何やってんだよ・・・もう・・・死んじゃえ!」
「あの・・・山崎さん?」
「ん?」
「石見さんと仲、いいの?」
「まぁ・・・帰る方向一緒だし・・・気付いたら仲良くなってたって感じだけど・・・なんで?」
ぎこちない口調。
彼女――山崎さんにとってミズキ君や渡部君と僕は異質の存在なのだろうか。
不慣れ?
フレンドリーじゃない?
「ああ別に。理系だし。俺も石見さんとちょっとだけ仲良いから。」
沈黙。
「あの・・・永久君」
「ん?」
「あのっあたし・・・あ、あの・・・永久君・・・」
悪口かな。
もっとしゃべれとか。
どうしよう。そんな事言われてもしゃべれないよ・・・。
「「♪♪♪」」
二人の携帯が同時に鳴りだす。
『影』だ。
気まずかっただけに正直助かった。
「んだよ・・・こんなときに」
山崎さんはバッグからケータイを取り出す。
「あ・・・」
自分の顔から血の気がひいていくのがわかる。
寒気が・・・した。
「どうしたの?」
山崎さんは不思議そうに僕をみる。
「山崎さん・・・後ろ!!!」
「え・・・?」
彼女は僕に言われたとおり後ろを見た。
『影』だ。
大型の『影』がヨダレを垂らしてこっちを見ている。
「っ」
あまりの至近距離に彼女は言葉を失っていた。
危険だ
山崎さんはすぐさま状況を把握して僕のほうへ走り出した。
「早く。」
僕は刀を右手に構え、左手を伸ばした。
彼女に届くように。
「永久君!」
その手を取ろうと山崎さんも手を伸ばす。
互いの指先が触れ合う。
あと一歩だ。あと少し。
ブシュッ
「と・・・わ・・・く・・・ん・・・」
ベチャッ
バタン
生臭い鉄の匂い。
うつ伏せに倒れた山崎さんから大量の血が流れ込む。
僕の白いワイシャツは彼女の血で真っ赤に染まった。
「山崎・・・さん?」
僕はすぐさま山崎さんを抱きかかえる。
彼女の背を持っていた僕の左手がヌルリとした感触を得る。
「あっあぁっ・・・」
声が出せない。
僕は混乱した頭の中から無理やり今の状況を把握しようと深呼吸した。
体中が震えている。
山崎さんは・・・あの『影』の爪で背中を刺された。
「や、山崎さん!」
僕は彼女の頬を何度か軽く叩く。
返事は無い。
「山崎っさん!返事して!お願いっだから!!ねえ、山崎さん!!」
何度やっても結果は見えているのに。
僕はあきらめきれなかった。
さっきまであんなに元気に・・・今日はあんまり元気そうじゃなかったけど・・・話してたのに。
どうして
ねえ、
どうしてたよ!!!
「うわあああああああああああああああああああああ」
僕はのどが潰れるほどの大声で叫んだ。
そして、刀を振り上げ『影』へと向かった。
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